江戸切子の技を未来へ紡ぐワイングラス「SUI-REN」
一つひとつ、職人の手による美しいカットが施された唯一無二のグラスで、好きなお酒を味わう。この冬、そんな至福のひと時にぴったりのワイングラス「SUI-REN(スイレン)」が「室町硝子工芸」から登場しました。
そもそも、室町硝子工芸は、江戸切子の魅力を伝えたい。そして、その熟練の技や丁寧な仕事をこれからも繋げていきたいと、日本の職人の作品をご紹介しています。
そんな中、予約制のショールームである白金店にご来店されたお客さまから「家でよくワインを飲むから、切子のワイングラスがあったら欲しい」「贈り物をする相手がワイン好きで……」というお声をいただき、このグラスを形にするに至りました。
グラスの形は3種類。左から「ブルゴーニュ」(価格¥35,000(税込¥38,500))「スパークリング」(価格¥35,000(税込¥38,500))「ボルドー」(価格¥35,000(税込¥38,500))。
こちらのプレートデザインは「Kikutsunagi(きくつなぎ)」です。
江戸切子らしさと機能性の両立
目指したのは、赤・白などのワインの色や香り、味をたのしむというワイングラス本来の体験を残しながら、江戸切子の華やかなカットもたのしめる意匠です。ワイングラスとしての機能性と、江戸切子ならではのきらびやかさ。これらを両立したモダンなワイングラス・シャンパングラスは、まだこの世にありませんでした。
「SUI-REN」はプレート部分のデザインを2種類ご用意しています。
奥は、江戸切子の代表的伝統文様「菊繋ぎ」を施した「Kikutsunagi(きくつなぎ)」。
手前は、代表的伝統文様の一つから着想を得たオリジナルデザイン「Nozomi(のぞみ)」です。
まず、グラスに華やかなカットを実現するために、施すカップ部分のカットの目の大きさを微調整する必要がありました。この目が細かすぎると、立体感が出ず、のっぺりとした印象に。するとたちまち、華やかさに欠けるのです。反対に、目が大きすぎると、立体感は出るものの、切子のきめ細やかな輝きが失われてしまいます。まさに絶妙なバランスが問われ、試行錯誤を繰り返しました。
機能性でいえば、口をつける部分(リム)とドリンクを注ぐカップ部分の多くには、あえてカットを施していません。これは、ガラス本来の透明な部分を多く残すことで、注がれたワインの味わいや色をたのしむというワイングラス本来の機能性を残すため。
さらに、フット・プレート部分にもカットを施しました。これにより、機能性はそのままに、グラス全体へ華やかな印象を与えています。
熟練の技により実現した意匠
そうして仕上がった、このワイングラス。カットを施す職人曰く、通常より技術や手間が必要だといいます。
たとえば、ワイングラス特有の湾曲したガラス面へのカット。均等に美しくカットすることが、通常のオールドグラスへのカットよりも技術を要するのだとか。また、台座(プレート)の「Kikutsunagi」の部分は、カットする前に引く基準線(割出し)が、通常使用する専用の機械が使えません。そのため、基準線を引く作業は全て手で行ないます。
これらの理由から、当初は職人に渋い顔をされました。しかし、なんとしても、すばらしい職人技を生かしたワイングラスをつくりたい。そして、その技をより多くの人に知ってもらい、未来に紡いでいきたい。そんな私たちの想いを汲んでくれた、熟練の工房と職人により具現化しました。
贈り物が、日本の伝統工芸の継承に繋がる
相手の顔を思い浮かべながら選ぶ、結婚祝いや還暦祝いなど。趣味趣向を知っている大切な人への贈り物はとくに、相手が使ってくれるか。また、使いやすいかなども気になるポイントです。
このワイングラスは、好みや性別、年齢を問わず使いやすく、食器としてさまざまな空間になじむように、あえて透明のガラスを選んでいます。また、施した江戸切子の伝統文様も、シンプルなものにしました。しかし、細やかにカットすることで、独特のきらめきを放ち、華もあります。ペアグラスでのご用意もありますので、記念品・ギフトとしてお選びいただけます。また、ワインだけではなく、冷酒・日本酒を楽しむのもおすすめしております。
使いやすく、ギフトに贈りやすい。このワイングラスには、最初にお伝えした、江戸切子の魅力を伝えたい。そして、その技や丁寧な仕事をこれからも繋げていきたいという、室町硝子工芸の想いが込められています。
そもそも、このワイングラスだけでなく、ほかの江戸切子も、求めるお客さまが増えれば増えるほど職人の力が必要になります。つまり、職人の仕事や雇用が生まれ、業界が活気づくのです。
多くの製品の中から、何を選ぶのか。日々の選択が、日本の伝統工芸の未来に繋がる。そんな目線で、どうぞこのワイングラスを手にとってみてください。日々のシーンに自然になじみながら、職人の手により生み出された江戸から続く熟練の技をおたのしみいただけるはずです。
そうして、お客さまがたのしんでくださることが、職人への支援と、伝統文化を繋げることにほかなりません。