江戸切子で味わう — 桜酒×卵焼き
ガラスをカットすることで生まれる、繊細で華麗な江戸切子の輝き。そのきらめきを、飾って味わうのもよいですが、お酒を飲むなど実際に使うなかで感じられる魅力もあります。
ここでは、四季折々の食卓におすすめのレシピと江戸切子をご紹介します。旬や年中行事をたのしみながら、江戸切子をうつわとして活用するよろこびを感じてみませんか。
江戸の歴代将軍から庶民まで夢中になった桜
梅に桃、こぶし、桜など、ふと見上げれば愛らしい花々が目をたのしませてくれる春。花見を計画している方もいらっしゃるかもしれませんね。今回は、そんなシーンにぴったりのお酒とおつまみをご紹介します。
そのルーツを奈良時代までさかのぼる花見ですが、当初は梅や萩などをたのしんでいました。桜を愛でるようになったのは、平安時代から。以来、日本人にとって「花見」といえば、桜を見るために野山へ行くことを指し、桜以外の花は「梅見」「観梅」など、その花の名前をつけて表します。
江戸時代には、花見は春の行楽として庶民の間にも広がり、お酒を酌み交わす場になっていきました。また、3代将軍・家光は、上野や隅田川添いに桜を植え、8代将軍・吉宗は飛鳥山を桜の名所にするなど、江戸の町に花見スポットも増えていきます。さらに、江戸時代は園芸が盛んになった時代でもあり、桜の品種改良も進みました。現在では、桜の開花予測の指標となっている品種の「ソメイヨシノ」ですが、江戸時代末期に交配して観賞用につくられたもの。花が大きく香りもよい華やかさを、花が咲いたあとに葉が出てくる特徴がより引き立て、この新品種は一躍人気となったそうです。
愛らしい姿と香りをいただく「桜酒」
今も昔も、変わらぬ美しさで私たちを魅了する桜は、食用としてもたのしめます。たとえば桜餅は、その一つ。花弁や葉を塩漬けにし、風味を閉じ込めた桜を使います。この塩漬けと日本酒が出会うと、華やかな「桜酒」に。グラスへ顔を近づけると、独特のよい香りがふわりと広がります。
レシピを提案してくださった料理家の蓮池陽子さん曰く「桜の香りを大事にするためにも、お酒は、すっきりとした味わいの純米酒を合わせるのがおすすめです。冷酒でもお燗でもおいしいタイプだと、なおよいでしょう。水のように、さらさらと飲めるお酒が、桜の風味を引き立ててくれると思います」。
お酒を注ぐ江戸切子は、透明なワイングラスが最適でしょう。ワイングラスは、そもそもお酒の見た目や香りをたのしむための酒器です。花弁が日本酒の中でふわふわと揺らぐ姿や、淡いピンク色が映え、また香りもよりしっかりと感じることができるでしょう。
「桜酒」と「卵焼き」のつくり方
冷めてもおいしく、お子さまも好きな卵焼きは、桜酒とのペアリングが抜群です。お好みで卵焼きを甘めに仕上げると、桜酒の香りと相まって和菓子をいただいているような気分に。ただしその場合、卵の焦げ付きに注意してください。砂糖など、調味料の量が増えると焦げやすくなります。また、出汁を加えて出汁巻にしても、お酒によく合います。
<桜酒>
材料(2人分)
桜の塩漬け 8個ほど
日本酒 1合(180ml)
つくり方
1 ボウルなどに桜の塩漬けを入れ、流水で塩をやさしく洗い流す。
2 お酒は、半量を40度くらいに温め、水を絞った1の桜を入れて、30分ほど置き冷ます。
3 残りのお酒と2を合わせ、グラスに注ぐ。
<卵焼き>
材料(2人分)
卵 3個(全卵)
砂糖 大さじ½
塩 ふたつまみ
サラダ油 適量
つくり方
1 卵はボウルなどに割りほぐし、砂糖、塩を入れ、白身を切るように混ぜ、ザルなどで漉す。
2 卵焼き器をよく熱し、サラダ油をひく。余計な油はキッチンペーパーなどで拭き取り、1の卵液1/3を入れて全体に広げる。表面がうっすら固まってきたら、卵焼き器の奥から1/3くらいを手前に折り、折った卵をもう半分に折り、巻くように焼いていく。
3 焼いた卵を卵焼き器の奥に移動させ、あいた部分にキッチンペーパーなどに含ませたサラダ油をひく。2と同量(残りの卵液の半分)を入れ、全体に薄く広げながら焼いた卵の下にも卵液を流し入れる。
4 2と同じ要領で、手前に巻きながら卵を焼いていく。残りの卵液も同様に焼き、ロール状にしていく。
5 焼き上がったら、卵焼き器から取り出し、ペーパータオルや巻き簾などで包んで粗熱をとる。
6 食べやすい大きさに切り分ける。
RECIPE
蓮池陽子|YOKO HASUIKE
料理家。東京都出身。「Aterie Story」の屋号で、レシピ開発・監修、レシピ本の制作などを行う。
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