江戸切子の代表的文様 vol.1

ガラス製品である「江戸切子」は、職人の手で表面に細かく線を刻むことで、その美しさを表現します。それらは「文様(もんよう)」と呼ばれ、カットガラスに欠かせない要素。現在まで、職人たちの手で、脈々と引き継がれてきました。

文様は、同じものを連続させたり、違うものを組み合わせたりして表現します。工房や職人によってスタイルがあり、作品を一目見ただけで誰が手がけたかわかる職人もいるのだとか。

さてここでは、数ある中から代表的な文様をご紹介します。

 

菊繋ぎ(きくつなぎ)

江戸切子 代表的文様「菊繋ぎ(きくつなぎ)」

縦・横・斜めの直線を組み合わせ、連続する文様を繋ぐようにして表現します。細かなカットの交差が「不老長寿」を意味する菊の花に見えることから、こう名付けられました。「きく=喜久」とも書けるため、喜びが久しく繋がるという意味もあります。

 

八角籠目(はっかくかごめ)

江戸切子 代表的文様「八角籠目(はっかくかごめ)」

竹籠の網目をモチーフにした格子模様「籠目(かごめ)」は、江戸切子の代表的文様の一つ。その中でも人気の文様が「八角籠目」です。八方へ広がるようなカットは、光をまとったようなうつくしさ。一方で、カットには高い精度が要求され、職人の腕の見せどころです。ちなみに「籠目」には、魔除けの意味もあるのだとか。

 

矢来(やらい)

江戸切子 代表的文様「矢来(やらい)」

江戸切子の中でも、もっとも基礎となる文様。斜線を等間隔にカットします。語源は、竹や丸太をクロスさせて組んだ囲いの「矢来」や、矢が飛んでいる様子など、諸説あります。「遣(や)らい」=の音から「入るのを防ぐ」。また、矢は「魔を射る」ことから、邪気を防いだり、魔除けの意味をもたせることも。

 

亀甲(きっこう)

江戸切子 代表的文様「亀甲(きっこう)」

丸いカットを連続的に施す「亀甲」。「亀甲繋ぎ」とも呼ばれます。語源は亀の甲羅です。亀は、日本で「鶴は千年、亀は万年」という言葉があるように、縁起のよい長寿のしるしとされてきました。古くから、おめでたい図柄「吉祥文様(きっしょうもんよう)」としても大切にされ、着物や帯、陶器など、広く用いられています。

 

七宝(しっぽう)

江戸切子 代表的文様「七宝(しっぽう)」

同じ大きさの円、または楕円を4分の1ずつ重ねた文様です。これを上下左右に規則正しく連続させたものを「七宝繋ぎ」と呼びます。語源は仏教用語から。仏教では、人の縁は7つの宝(金・銀・水晶・瑠璃・めのう・珊瑚・しゃこ)と同等の価値があると考えます。また、円(縁)は和に繋がる。人と人の和も大切に、という意味もあるそうです。さらに、「しっぽう」という呼び方は、この文様が四方に伸びていることから、広がりや子孫繁栄を願う意味を込める場合もあります。

 

いかがでしたか? 個性豊かな文様は、切子(Kiriko)の大きな魅力。また、別の機会に、ほかの文様もご紹介します。

江戸切子の代表的文様 vol.2 はこちらから

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