切子のお手入れ

職人が、一つひとつ、多彩で繊細なカットを施していく切子。世界に二つとして同じものはない、美しきガラス製品です。その姿をより長く楽しむためにも、日常的なお手入れをおすすめします。

では、具体的にどのようにすればよいのでしょう。ガラス作家であり、その魅力を広く伝える東京ガラス工芸研究所・大本研一郎さんにお話を伺いました。

 

扱い方の基本は、やさしく丁寧に

「切子には、カットによって生まれたシャープな突起があります。それがかけたり、ガラスの表面が傷ついたりしないよう、気をつけましょう。ガラス同士をぶつけないことはもちろん、木製のテーブルなどに置く時も、そっと静かに置きます。

また、ガラス製品は表面のこすれにも弱いので、なるべくやさしく拭いたり洗ったりします。

こうして丁寧に扱うことで、だんだん自分の子どものような愛着が湧いてきますよ」

 

室町硝子工芸 切子のお手入れ

用意するもの

切子のお手入れに必要なものは、次の4つです。

・天然素材の清潔で柔らかい布
「拭いたり洗ったりするのに使う布は、ナイロン製の生地だと傷がつく恐れがあります。おすすめは、綿など天然繊維のもの。砂や埃などの汚れがついていない、清潔なタオルかふきんを用意してください」

・亀の子たわし
「たわしは、細い溝に入った汚れを落とすのに使います。ただし、金属やナイロンでできたものは、ガラスの表面に傷をつける場合があります。亀の子束子はシュロやパームという植物からできているので、やさしく洗うことができ、切子の職人でも愛用している人は多いですよ」

・食器洗い用の中性洗剤とスポンジか布
「避けていただきたいのは、研磨剤の入ったクレンザー。表面を削ってしまう恐れがあります。食器洗い用の中性洗剤と、やわらかい食器洗い用スポンジか布を用意します」

 

室町硝子工芸 切子を優しく拭く様子

シーンごとのお手入れ

切子と付き合ううえで、お手入れするシーンをいくつかご紹介します。

・初めにするべきお手入れ
「手元に迎えたら、やわらかい布で全体の埃を拭き取りましょう。案外、見えない埃がついているので、これだけでさらに輝きが増します」

・飾って楽しむ場合
「表面についた埃や指紋を、乾いたやわらかい布で拭き取ります。軽い汚れは、数年単位では問題ありませんが、数十年単位ではかなり強固な汚れになる場合もあります。ガラスの表面を、つねにきれいに保つことは大事です。

ちなみに飾る場所は、埃がかぶらないようなガラス戸付きの棚が望ましいでしょう。また、寒暖の差が大きい場所には置きません。温度変化により、割れたり欠けたりする場合があります」

・使って楽しんだ後
「食器用洗剤を溶かしたぬるま湯に浸して、やわらかいスポンジか布で洗います。カット面など、細かい溝に入った汚れは、亀の子たわしで少しずつ丁寧に。ゴシゴシこするのはやめましょう。

ぬるめのお湯でよくすすいだら、仕上げに乾いたやわらかい布で、水滴をよく拭き取ります。これにより、水垢やくもりを防ぎます」

・箱などに長期間しまう場合
「指紋、埃、水滴などを、乾いたやわらかい布できれいに拭き取ります。また会う日まで、美しい顔でしまっておきましょう」

 

室町硝子工芸 切子を長く楽しむ

気が付いたときにではなく、つねにきれいな状態を保つ。そう聞くと大変なように感じますが、お手入れを日常の習慣にすることで、大切な切子を、いつも、いつまでも楽しめるのです。