あるがままのきらめき − 透きガラスの切子
切子のルーツ
切子に使われているガラス素材は、大きく分けて2種類あります。無色透明な「透き(すき)ガラス」と、外側に色付きガラス、内側に透明なガラスの二重構造になっている「色被せ(いろきせ)ガラス」です。
今でこそ、日本では「切子といえば色被せガラス」という印象がありますが、そのルーツは透きガラスにあります。
もっと読む 「切子の素材 − 透きガラスと色被せガラス」の記事へ
透きガラスならではの美しさ
カット面に受ける光の屈折によりきらめく、透きガラスの切子。そこには、無色透明ならではのピュアな美しさがあります。
ここからは、室町硝子工芸でラインナップしている透きガラスの「江戸切子」をご紹介します。
* * *
繊細さと大胆さが同居
八角籠目文様 オールド 玻璃
清涼な川の流れを思わせるカットと、繊細な文様が刻まれたオールドグラス。流れるような線と、規則正しく八角形が並ぶ「江戸切子」の代表的文様「八角籠目(はっかくかごめ)」を組み合わせています。
考案したのは、若手職人も多い「ミツワ硝子工房」に所属する、日本の伝統工芸士・石塚春樹さんです。きらきら、まばゆい輝きが溢れる、細かく刻まれた八角籠目。石塚さんによるカットは、手仕事で施すことのできるギリギリの細やかさです。さらにそこへ、波打つような力強いカットも施すことで、大胆で華やかな印象に。
見る角度により多彩な姿を楽しめる、このグラス。手に取ると、きっとくるくる回し、さまざまな角度からきらめきを味わいたくなることでしょう。
モダンな組み合わせ
亀甲魚子文様 オールド 玻璃
六角形の「亀甲(きっこう)」文様をメインに、底面近くには丸い「魚子(ななこ)」文様を施したオールドグラス。手がけたのは「ミツワ硝子工房」に所属する、日本の伝統工芸士・石塚春樹さんです。
江戸切子で用いられる2つの代表的文様を、規則正しくカットし、組み合わせることで、まるで幾何学モチーフのよう。どこかモダンな印象に仕上がっています。このグラスは、全体に同じ文様を刻むことで、見る人の視線が分散。カットの美しさもちろん、飲み物などグラスの中身の見え方にも目がいく面白さがあります。
飾って楽しむもよし、飲みながらじっくり眺めるもよし。他にありそうでない、シンプルながらも個性的なグラスです。
シンプルにきらめきを味わう
菊つなぎ天開オールドグラス
100年近く続く江戸切子工房「小林硝子工芸所」の3代目・小林淑郎(よしろう)さんが手がけた、このグラス。ぐるりと施されているのは、江戸切子の代表的文様である「菊繋ぎ(きくつなぎ)」です。
直線を交差させていく菊繋ぎを、非常に細かく刻むことで、きらきらと華やかな輝きがこぼれ落ちます。また、グラスの内側を覗き込むと、底面にも菊繋ぎが丁寧にカット。飲み物を注いだり、口にしたりするときにも、その仕事の美しさを感じられます。
定番のオールドグラス。しかも、シンプルな透きグラスに、規則正しく代表的文様を施しているからこそ、確かな仕事が伝わる作品です。
* * *
いかがでしたか? ひと口に「透きガラス」と言っても、デザインや刻まれる代表的文様で、随分印象が変わります。また、無色透明だからこそ、細やかな仕事が光り輝くという魅力も。
室町硝子工芸のギャラリーストアでは、この他の透きガラス作品もご覧いただけます。ご予約のうえ、どうぞ気軽に見にいらしてください。
来店予約はこちらから