白金店 − 本日のお花 #002
室町硝子工芸 白金店にある小さな水盤。この水盤に水を張り、色とりどり花を浮かべたり、敷き詰めたり。これらは、季節や気候に応じてスタッフ選んだもの。そこには、江戸切子を飾る空間を、より華やかに、特別な空間にしてお客さまをおもてなししたい−−。そんな想いを込めています。
この連載「本日のお花」では、白金店に飾っている花をご紹介。歴史や特徴など、花を取りまくさまざまなストーリーをお伝えします。
日本の秋の代表的象徴「ススキ」
野趣に富む秋の引き立て役「フジバカマ」
ススキ
和名:芒・薄(ススキ) 英名:Japanese silver grass 別名:尾花(おばな)
フジバカマ
和名:藤袴(フジバカマ) 英名:Thoroughtwort
厳しい暑さが続いた8月、少しずつ秋めいた空気が漂い始めた9月。10月に入った今では優しい日差しとさらりとした風、すっかり秋の空気に様変わりです。今年2020年10月1日には、中秋の満月、空を見上げてお月見を楽しんだ方もおられるのではないでしょうか。
空だけではなく、花屋さんに並ぶ草花たちも秋の顔に。皆さまは秋を象徴する7種の草花の総称「秋の七草」はご存知ですか?秋の七草は、日本に現存する最古の歌集「万葉集」に収められた歌が始まりと言われ、1200年以上も前より、秋の訪れの象徴として親しまれてきました。
秋の七草は「萩(はぎ)」「尾花(おばな)」「葛(くず)」「撫子(なでしこ)」「女郎花(おみなえし)」「藤袴(ふじばかま)」「桔梗(ききょう)」の7種が挙げられます。その中でも今回選んだのは、尾花とよばれる「ススキ」と「フジバカマ」。いずれも原産地は日本をはじめ、朝鮮半島や中国などの東アジアと言われています。
ススキは日本人の暮らしと深く結びついており、国内で知らない人は少ないでしょう。野山で手に入りやすかったことで、古くから茅葺屋根の材料の一つとして使われてきました。見て楽しむだけではなく、生活に欠かせない存在でもあったのです。ススキが花屋さんに出回るのは8〜11月ごろ。お月見シーズンでは特に人気ですね。
フジバカマもまた、河原などにいたるところに自生していたことから、身近な草花として親しまれてきました。蕾をそのまま生かし、自然な風合いを楽しむフジバカマは、ナチュラルなあしらいで他の花を引き立ててくれます。かつては自生していたフジバカマ、現在では自生種はほとんど見られないため、花屋さんでお見かけできます。主な出回り時期は8月〜10月と言われていますが、今年は天候などを理由に、出回り時期が例年より早く終わってしまう場合もあるのだとか。
お店の水盆には、ススキとフジバカマ、加えて和名を和桜(あきざくら)と称された「コスモス」をあしらいました。江戸切子と秋の草花と一緒に飾ると、輝きと透明感に涼を求める、夏のイメージとはまた違った見え方に。移ろいゆく季節の色に、切子の輝きは変わらずにこたえてくれます。
日本の秋は1年の中でも過ごしやすい季節。思い思いの秋を楽しみ、豊かな時間、穏やかな時間をみなさまお過ごしください。