3月 16, 2023

毎日のひとときを彩る、江戸切子の“小さなグラス”

江戸切子や切子のグラスと言っても様々ありますが、今回ご紹介するのは、手のひらにのる“小さなグラス”です。日本酒などのお酒を味わうときをはじめ、幅広いたのしみ方ができるのも小さな切子ならでは。

小さな切子のグラスを指す「ぐい呑」とは？

江戸切子では、日本酒などをたのしむ小さなグラスを「ぐい呑」と表します。同じようなサイズの酒器に「おちょこ」もありますが、二つの違いはどこにあるのでしょうか？

そもそも、ぐい呑とは、お酒を入れるためのうつわ（酒器（しゅき））の種類を指します。おちょことの違いはサイズです。ぐい呑は、お茶碗よりも小さいですが、日本酒などのお酒を入れるには大きめ。一方のおちょこは小ぶりで、入る量はひと口でスイッと飲み切れる程度。ただし、どちらもサイズに明確な決まりはないようです。

名前の理由は諸説ありますが「グイッと飲む」ためのうつわだから。その歴史は古く、安土桃山時代後期に遡ります。そもそもぐい呑は、懐石料理などでお酒のつまみを入れる向付（むこうづけ）として使われていたそうです。盛られていた料理をたのしんだ後に、あいたうつわで日本酒を飲んだことが起源とされています。

手のひらサイズならではのたのしみ方

一つが、うつわとして飲むたのしみ。日本酒はもちろん、梅酒などすこしずついただきたい果実酒を注ぐのにぴったりです。また、ハーブや果物を漬け込んだコーディアルシロップを割って飲んだり、様々なミニカクテルをつくってたのしんでも。ちょっと飲むのに、ちょうどいい量が入れられます。

職人が、一つひとつ丁寧にカットを施していく切子は、小さくても贅沢感のあるグラスです。お好きな飲み物をゆったり味わうご褒美タイムに。また、大切な方との食卓にもおすすめです。

切子は、飾ったり手にとったりして、眺めてたのしむうれしさもあります。中でも小さなグラスは、そのサイズゆえ、集めても場所を取らず、眺めるにしても手に取りやすいのもうれしいところ。

また、コレクション心をくすぐる存在でもあります。ずらりと並んだ愛らしさは、そのサイズ感ならでは。どんどん集めたくなり、コレクターが多数いるのも納得。

集めたくなる理由の一つが、やはり切子ならではのカットやガラスの色による、その個性があります。同じ伝統文様を用いても、カットの仕方によってデザインはいろいろ。また、全く同じデザインでも、ガラスの色によっても印象は大きく違います。たとえば、同じデザインのグラスを色違いで集める、同じ色で柄違いのものを集めてみるなど。自分でテーマを決めてコレクションしてみるのもたのしそうです。

眺める角度や、受けた光などで、様々な表情を見せる切子。小さなグラスでも存在感があり、そのまま置いて飾るだけでも十分立派なインテリアです。

飾る場所は、飾り棚をはじめ、おすすめは玄関。日々の通り道にお気に入りがあると、見るたびにうれしくなりますし、来客の際には、美しい切子のグラスが目からもおもてなししてくれます。ちなみに風水では、ガラスの置物が玄関にあると運気を上げやすくなるのだとか。ガラスは光を増幅させ、周りを明るくさせるためだそうです。

たくさん集めているなら、コレクションボックスなどに入れて、まとめて飾るのも素敵です。同じようなサイズ感のものがずらりと並ぶ姿は、小さくても圧巻。切子ならではの、世界に2つとして同じもののない、豊かな個性も感じていただけるでしょう。

飲み物にとどまらず、生花やドライフラワー、ポプリなどを入れて飾っても。たとえば生花。切り花は、花瓶に挿して何日かすると元気がなくなっていきます。少しでも長くたのしむには、水を入れ替えるタイミングで茎や葉を少しずつカットしていくのがコツ。茎の長さに合わせて、花器も小さくなっていきます。そんなふうに、最後まで花の美しさを味わうという意味でも、短い切り花を小さなグラスに飾ってはいかがでしょう。キラキラと輝く切子のカットが、ますます花の美しさを感じさせてくれるはずです。