初めての江戸切子にタンブラーを一つ

江戸切子のグラスといっても、様々なタイプがあります。メジャーなのは、ウイスキーなどのシングルモルトを味わう「ロックグラス」や、日本酒をたのしむ「ぐい呑」。そして、細長くすっきりとしたシルエットの「タンブラー(タンブラーグラス)」。

今回は、これら定番の中でも、タンブラーの魅力を紐解いていきます。

タンブラーグラスの江戸切子

江戸切子といえば、多くの方にとって「お酒を飲むグラス」というイメージがあるかもしれません。しかし、タンブラーがそれに止まらないのは、その形状ゆえかもしれません。

タンブラーは「ビアグラス」などという呼び方でも親しまれ、容量200ml前後の作品が比較的よく見られます。スリムで大きすぎず、女性の手にもなじみやすいという魅力があります。また、ビールやハイボールを始め、冷たいお茶や、フルーツジュース、炭酸飲料などのソフトドリンクを飲む場合にも重宝。注ぐものをあまり選ばないのも、広く愛される所以でしょう。

江戸切子の新たな魅力を伝えていきたいと考えている「室町硝子工芸」でも、2021年の秋に、オリジナルのタンブラーをご用意しました。シャープな縞模様が涼やかな「唯千(ゆいせん)」と、おめでたい亀甲文様をモチーフにした「壱甲(いっこう)」の、2種類です。いずれも一つの文様を使用し、シンプルでモダンなデザインを目指しながら、眺めて、触れて、聞いて、飲んでと、五感でおたのしみいただけるよう技巧を凝らしています。

江戸切子のタンブラー 唯千

江戸切子のタンブラー 壱甲

江戸切子のタンブラーには、他のグラスにはない魅力があります。

一つが、いつもより飲む時間そのものを味わいたくなる点。冷たいビールやソフトドリンクは、暑い季節にグイッと飲むイメージがありますが、なぜか少しずつ、ゆっくりと味わいたくなるのです。これには、江戸切子特有の“重み”と“きらめき”が関係しているかもしれません。

「室町硝子工芸」でもオリジナル製品に使うガラス生地の「クリスタルガラス」は、金属の鉛を素材に加え、カットした際により美しく輝くようつくられています。また、江戸切子はカットを施すため、使用するガラス生地そのものが分厚いという特徴も。これらの理由から、一般的なグラスより重量感があるのです。

程よい重みのグラスに刻まれた、繊細なカット。たっぷり注いだ状態はもちろん、飲もうと覗き込んだ瞬間、少しずつ中身が減っていく過程での移ろいなど。飲む時間そのものが、まさにエンターテインメント。思わず見惚れて飲む手が止まってしまう……などということも。「時を止めるグラス」といっても過言ではありません。

だからか、飲み慣れているドリンクであっても、いつもより香りを感じるかもしれません。スローペースで飲むことで、花開いた香りがいつもより鼻腔をくすぐるのでしょう。

初めての江戸切子にはタンブラーグラス

また、江戸切子は職人が一つひとつカットを施す、唯一無二のガラス製品であることも大きな特徴の一つです。だから、タンブラーはロックグラスやぐい呑よりカジュアルでありながらも、やはり特別な存在感を放つといえます。1日の終わりや休日のリラックスタイムはもちろん、大事なお客さまへのおもてなしにもぴったり。上質なグラスで飲み物をお出しすれば、きっとお客さまにも、大事にされているということが伝わるはずです。

このように、小ぶりながらも満足感が高く、特別なグラスのタンブラー。現代の生活になじみながら、カットが放つ美しさで、共に過ごす時間をより豊かに彩ってくれるという、他にはない魅力があります。

江戸切子のグラスをたのしんでみたいけれど、まずどれを選ぶか。また、大切な贈り物に選びたいけれど、どなたにもなじむ江戸切子はどれか。もし迷われたら、タンブラーを手にしてみてはいかがですか。

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