職人と江戸切子 -Vol.6 カットの要「ダイヤモンドホイール」
光を受けるとキラキラ輝き出す「江戸切子」。その繊細で華やかなきらめきを生み出すののは、ほかならぬ職人です。一つひとつ、ガラス職人が吹いてつくるガラス生地に、江戸切子職人が細やかなカットを施していきます。
確かな腕と豊富な経験に甘んずることなく、目の前のガラス生地と向き合う。厳しくもすばらしい、その世界。
ここでは、唯一無二の江戸切子に欠かせない“職人”を取り巻くストーリーをご紹介します。
今回ご紹介するのは「ダイヤモンドホイール」です。ガラスを効率よくカットする(削る)ことができる道具で、江戸切子の作品に欠かせません。
古くは、金盤や砥石を使用してガラスを削っていました。
そこへダイヤモンドホイールが登場したことで、カットの効率はぐんと向上。また、文様の精度や仕上がりの美しさにも繋がったと考えられます。
菱山、角溝、蒲鉾、平など、様々な形状があり、それぞれを組み合わせていくことで、カットの交わる「交点」の形状が変化します。この組み合わせは、作品や職人により様々です。また、文様やガラス生地の形状に合わせて粒度や径の違うものを使うことでも、表現は変わっていきます。
どの道具もそうですが、大切に、こまめな手入れが欠かせません。無理な力をかけず適切に扱い、道具とガラス生地のコンディションを確認しながら、一つひとつの作業を進めていく。こうした当たり前のように思えることも、職人に欠かせない知識と技術といえます。
手入れでいうと、ダイヤモンドホイールの場合は、だんだん磨耗して削れなくなっていきます。そこで、表面を整える「目立て」は頻繁に行う手入れの一つ。また、磨耗により表面の形状も変化するため、ベストな状態を維持することも欠かせません。たとえば「菱山」の場合は、0.5度の範囲で角度の微調整を行うのだとか。
理想的なカットを施すために、ダイヤモンドホイールをオーダーメイドする職人もいるそうです。そのあくなき美への探究心は、目の前の輝きをより高みにするべく向き合う、職人ならではかもしれません。