Artisan Interview 4 — 細小路 圭さん(ミツワ硝子工芸)・後編

細小路 圭 KEI HOSOKOJI

1982年、岡山県出身。1970年に創業した工房「ミツワ硝子工芸」にて、20〜30代の若手江戸切子職人と共に製造、作品作りにも邁進する。2009年「江戸切子新作展」にて佳作を受賞。2019年、日本の伝統工芸士に認定される。


江戸切子に携わる人々が、なにを想い、一つひとつの作品や日々の仕事と向き合っているのか。職人のもとを尋ねる連載『Artisan Interview』。4人目は、伝統工芸士の細小路 圭さんです。後編では、細小路さんの作品への考えや、今後への想いなどをインタビュー。

多くの人の定番になりたい

——作品を作り始めたきっかけを教えてください。

江戸切子職人 細小路圭氏作品「渦」

細小路氏作品「渦」

画像提供:ミツワ硝子工芸  


まず、僕は作品を作って出品もしていますが、芸術家にはなりたいわけではありません。職人であり、デザイナーでありたい。誰か一人のためというより、多くの人が使ってくれるような、そのうちそれが定番になるような、そういうもの作りをしたいんです。

だから作品も、僕の想いがすごく入っているというより、多くの人が「いい」と感じてくださって、その人たちの気持ちが入るような存在になればいいなと思っています。だから最近では、どうしたら多くの人が「きれい」とか「美しい」とか思ってくれるのか。そういう世間の目みたいなことを、すごく考えます。

多分、自分の個性は、主張しなくてもにじみ出るんです。だから僕は、お客さまがどういう場所やシーンで使うかをイメージして、形にする。作品の個性や価値は、お客さまが感じてくださればいいと思っています。

江戸切子伝統工芸士 細小路圭氏

モチーフの参考にするのは、日常の中で、すごく印象に残っていたものです。と言っても、あえて記憶しているわけではありません。作品を作ろうとイメージしたら、ふっと浮かぶもの。それって強く印象に残っているから浮かぶのだと思うんですが、僕の印象に強く残っているということは、きっと、作品にしたら他の誰かにも印象的に届く気がします。


作り手としてアップデートしていきたい

——細小路さんが、作品で具体的にこだわったところを伺いたいです。

光菊 丸オールド」でいえば、反射でしょうか。シンプルなデザインですが、いろいろなところから入ってくる光と、その反射を楽しんでいただけるように考えました。

元になったのは「藍菊平鉢」という自分の作品です。これは高く評価していただきましたし、自分としてもバランスよくできたと感じています。「光菊 丸オールド」は、それをグラスにするならどういうふうにできるかなと考えてみました。多分、実際に生活の中で使いやすいと思うんですよ、グラスなら。

細小路 圭 氏 作品「藍菊平鉢」
細小路 圭氏作品「藍菊平鉢」

画像提供:ミツワ硝子工芸  

 

カットには、品を意識しました。深く入れて、浅く入れてというカットを淀みなく繰り返すことで、線の深さで色の強弱をつけています。

室町硝子工芸 取扱品 江戸切子「光菊」

光菊 丸オールド ルリ

——では最後に、江戸切子の職人として、今後の展望を聞かせてください。

これからが、そして「光菊 丸オールド」が、まさに始まりだと思っています。

僕は、江戸切子の職人として、大ヒット商品や定番になっていくようなデザインは、まだまだ生み出せていません。でもゆくゆくは、職人がまねして使ってくれるような江戸切子を考えたいんです。

そういう意味で言えば「光菊 丸オールド」は、自分としてバシッとはまったデザインの一つ。だからこそ、ここから大ヒット商品や定番になっていくようなデザインが生み出していけたらいいですね。

よいものを生み出すには、使いやすさも大事だと思っています。使いやすさというのは、材質、デザイン、値段、全てにおいてです。そのためにも、いろんな売り場で他の商品や職人の技を見たり、知り合いの職人に話を聞いたりして、お客さまの求めているものを常に知って、自分自身をアップデートしていきたいです。

 

* * *

控えめながら、強い志をもつ細小路さん。普遍的に愛される江戸切子を目指して、仕事に、作品作りに邁進したいと語ってくださいました。伝統のある江戸切子に、新しい風を。そしてそれが、新しい定番になる日を、楽しみにしています。

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光菊 丸オールド 金赤

光菊 丸オールド 金赤



光菊 丸オールド ルリ
光菊 丸オールド ルリ

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