江戸切子の選び方
ほしい作品がある時はよいですが、何か一つ江戸切子をという場合。何を基準に選べば、世界に一つと、よりよい出会いができるでしょう。今回は、江戸切子の選び方のポイントをご紹介します。
色で選ぶ
江戸切子は、多彩な色も特徴の一つです。大きく分けて、透明な「透きガラス(すきガラス)」と、色のついた「色被せガラス(いろきせガラス)」の2種類があります。
【透きガラス】
ガラス生地に施された江戸切子のカットが、眺める角度や光の当たり方で輝きを放つのは、色被せガラスと同じ。これに加え、透きガラスのグラスやうつわの場合、中に入れるものの色がそのままたのしめます。また、どのような空間やライフスタイルにもなじみやすい、モダンな作品が多いのも特徴です。
【色被せガラス】
透明なガラス生地に、色付きのガラスを重ねてつくられたガラス生地に、江戸切子の職人が伝統文様などを刻み、独特のきらめきを生み出します。金赤(赤)、瑠璃(青)、黒、緑、黄色など、様々なカラーバリエーションがあります。
中でも、王道の「金赤(きんあか)」は、結婚式の引き出物で目にしたことのある方もいらっしゃるのでは? 記念品など、大切な、おめでたいギフトにも重宝します。また、ロックグラスやぐい呑など、江戸切子の定番アイテムの場合、金赤を女性用に。瑠璃を男性用にと、ペアで選ぶ方も多くいらっしゃいます。
時代や技術とともに、生まれたバリエーションの一つが「黒」です。濃い色であればあるほど「カットが難しい」と職人にいわしめる江戸切子。つまり、黒の江戸切子は高い技術の表れと言っても過言ではありません。モノトーンで表現される世界は、シンプルで、モダンな雰囲気があります。
用途で選ぶ
江戸切子は、ロックグラス、ぐい呑、タンブラーなどの「グラス」のほかに、小鉢やお皿などのうつわ、花器、箸置き、そしてアクセサリーなど、実に様々な作品があります。また、飲んだり身に付けたりする以外に、オブジェとして飾ったり、集めてコレクションするたのしみも。
どれがよいか迷う場合は、生活でどのように江戸切子を愛でたいか、イメージしてみましょう。
【飲む】
特別な飲み物を味わうひとときや、おもてなしの席に。江戸切子のグラスは、職人によるカットの美しさと、手のひらに感じるどっしりとした重みなどもあり、日々のとっておきの一杯を、より一層豊かなものにしてくれます。ですからまず一つ、江戸切子の作品を使ってみたい場合は、グラスを選んでみてはいかがでしょう。
グラスと言っても、いろいろな形があります。普段、どのような飲み物をよく飲むか。また、江戸切子で飲みたいものは、どのようなドリンクかをイメージしてみてください。
ウイスキー、ラム、スコッチ、焼酎、泡盛などロック(オン・ザ・ロックス)でたのしむお酒の場合は「ロックグラス」を。ビール、冷たいお茶やソフトドリンクなら「タンブラー」。そして、日本酒の場合は、やはり「ぐい呑」がおすすめです。
【飾る】
大きさは問わず、棚の上にそっと置くだけでも存在感を発揮します。中でも、ぐい呑など小さなものの場合は、いくつか並べても愛らしい。
サイズの大きなものの場合、部屋の印象を決めるほどの影響力があります。また、大きな作品は、カットするのに高い技術と体力、時間が必要なため、値は張りますが、これというものに出会ったのなら一生ものとして迎えることをおすすめします。
室町硝子工芸でご紹介している大物作品
https://muromachi-glass-art.com/collections/others/products/minamo-no-sasoi
素材で選ぶ
ガラス製品である江戸切子には「クリスタルガラス」と「ソーダガラス」という、性質の異なる2種のガラス生地が使われています。見た目には大きな違いはありませんが、次のような特徴があります。
【クリスタルガラス】
高級なガラス食器に使われています。ほどよい重量感があり、光の屈折率が高く、ソーダガラスに比べると光沢があります。氷が触れたり軽く叩くと金属のような澄んだ音がします。「室町硝子工芸」でご紹介する江戸切子はほとんどがクリスタルガラス製ですが、スタッフまでお尋ねください。
【ソーダガラス】
窓ガラスやビン、日常の食器類などに用いられている、身近なガラスです。原料に炭酸ナトリウムが使用されていることから「ソーダ」という名前がつけられており、古代で初めてつくられたのはソーダガラスなのだとか。透明度があり、硬くて軽いのも特徴です。
つくり手で選ぶ
実は、江戸切子を名乗るには「江戸切子共同組合」に所属・認定された江戸切子工房の職人による、手作業の作品である必要があるのです。
文様があしらわれたガラス製品には、溶けたガラスを型へ流し込みつくるものと、職人による手作業でカットを施していくものの2種類があります。大きな違いは、一つひとつカットを施すことで生まれる、華やかな輝き。型に流し込む場合、どうしても角がゆるやかになり、職人が丁寧に削ったカットのきらめきには到底かないません。
ですから、江戸切子を選ぶ場合は、まずそもそも江戸切子工房の職人が手掛けているかという点をチェック。そこから、いろいろな作品を見ていくうちに、この佇まいに惹かれるというものがいくつか出てくるはず。作者である職人の名前が添えられているものも多いので、気になったつくり手で探すというのもおすすめです。ちなみに、毎年春ごろには「江戸切子新作展」という気鋭の作家たちの大物が発表される展示も。受賞作などを見てみるのもよいでしょう。